マレーシア法人の設立手順~新法対応(The Companies Act 2016)~

マレーシアの会社法は、改正により新会社法(The Companies Act 2016)が成立し、2017年1月31日より施行されました。
本サイトでは、新会社法に則って株式有限責任会社の設立手続きに関する内容を記載します。

マレーシアに現地法人を設立する際の手続きは、大きく2ステップになります。
まず、ネームサーチと呼ばれる社名の使用許可申請を行います。日本でも今の会社法になる以前は、その商号(会社名)が使えるかの調査をしましたが、今ではその必要性も低くなっていますが、マレーシアでは必須の手続きになります。

そして、社名使用許可を得た後に設立登記申請書類を提出します。

マレーシアでの会社設立手続きの大まかな流れは以下の通りです。

1.会社設立の基礎的な決定事項を検討します。

2.カンパニーセクレタリー(会社秘書役)の決定

3.会社名(商号)の使用許可申請(ネームサーチ)

4.株主の決定

5.取締役の決定

6.定款、必要書類の作成

7.マレーシア会社登記所(CCM)に会社設立の申請

8.登記完了

それぞれ、詳しく見ていきます。

1.会社設立の基礎的な決定事項を検討します。

会社を設立するために必要な基礎事項をあらかじめ検討しておきましょう。

具体的には、会社名(商号)、株主や取締役の構成メンバー、事業内容などです。

その他、必要な許認可(ビジネスライセンス)や雇用パスの必要の有無も重要です。
これらによって必要な資本金額が異なります。

2.カンパニーセクレタリー(会社秘書役)の決定

カンパニーセクレタリーとは、和訳すると会社秘書役となりますが、日本にはない制度ので、ピンと来ない方が多いかと思います。

日本では馴染みがないのですが、アメリカ、イギリス、カナダ、シンガポール、インド、香港などなど・・・。海外の国々では、会社の重要な機関として一般的です。

カンパニーセクレタリーの仕事は、法定の報告の届出、定款変更や登記変更に関する手続き、株主総会や取締役会の議事録作成、保管などです。

会社設立の際にだけ必要なのではなく、設立後も様々な手続きの際に必要となり、最低1名のカンパニーセクレタリーを任命する義務があります。

新会社法においては、会社設立手続きをカンパニーセクレタリーに依頼せずとも、発起人がすることも認められていますが、カンパニーセクレタリーに依頼して手続きをすることが一般的です。

3.会社名(商号)の使用許可申請(ネームサーチ)

会社設立に際しては、まずネームサーチ申請書を提出し、マレーシア会社登記所(Companies Commission of Malaysia/以下、CCMと記載)に希望する会社名のネームサーチを行い社名の使用許可を得ます。

オンラインでの申請により行い、結果は1日で得られます。

なお、既に登記されている会社名、予約されている会社名(会社登録委員会がその会社名使用を許可してから3ヶ月間)は使用することが出来ません。

また、わいせつな性質の言葉を含んでいたり、公序良俗に反している、誤解を招く名前などは、「望ましくない(undesirable)」または「受け入れられない(unacceptable)」と判断され、許可されません。

「GUIDELINES ON COMPANY NAMES」という社名に関するガイドラインがありますので、事前に確認しておくと良いでしょう。

名前を決める際に遵守すべき原則(「GUIDELINES ON COMPANY NAMES」より)

A.正しいスペルと適切な文法を使用する。
B.ビジネスの種類を記述し、適切な文法に従わなければならない場合は、マレーシア語と英語の混合語を使用できる。
C.名前にマレー語や英語以外の言葉が含まれている場合、その言葉の意味が分るようにする。
D.侮辱的でない、または一般の人々に不快感を与えない名前であること
E.宗教の要素に似ていない名前であること
F.あまりにも一般的な言葉の使用は避ける。
EX)”Technology Sdn.Bhd.”や”International Sdn.Bhd.”など
G.取締役の氏名を会社名として使用できる。(申込書に指定された取締役の氏名のみ)
他の個人名が使用する場合は、関係の証明が必要。同じ個人名が使われている企業から同意書を得る必要がある。
H.造語の場合、その言葉の意味が分るようにする。
I.氏名は、取締役又は株主(オーナー)の氏名
J.使用できる記号は次の5つのみ。
1.“&”(アンド) EX) D&T Services Sdn. Bhd.
2.“.”(ドット) EX) Mr. John Trade Sdn. Bhd.
3.“-”(ハイフン) EX) Kupu-Kupu Design Sdn. Bhd.
4.“()”(カッコ) EX) ZY Advertising (2017) Sdn. Bhd.
5.“’”(アポストロフィー) EX) Mum’s Recipe Sdn. Bhd.

その他、ロイヤルファミリーや政府機関などと勘違いする名前は認められません。
EX) Royal、King、Queen、Prince、Princess、Imperial、State、Nationalなど。

社名使用の許可を得た後30日間有効であり、この期間内にCCMに登記申請し、会社設立の登記を行わなくてはならなりません。申請はオンラインで行います。

4.株主の決定

株主は、最低1名で良く、居住要件もありません。
最低資本金額は、1RM(約27円~30円)です。

ただし、Employment Pass(就労ビザ)を取得する為には、ローカル(マレーシア)と外資の出資比率等により必要な資本金額が定められています。

≪外資100% 日本人等の外国人による100%出資の場合≫
払込資本金は、最低50万RM必要です。

≪ローカル資本との合弁会社 ローカルと日本人等の外国人がそれぞれ出資≫
払込資本金は最低35万RM必要です。

≪ローカル資本100% ローカル(マレーシア人)による100%出資の場合≫
払込資本金は最低25万RM必要です。

以上のように、ローカル資本と外国資本の出資比率により必要な払込資本金額が異なり、外資100%の場合は、ローカル資本100%の会社よりもハードルが高くなります。

また、上記の他、業種別にも規定があり、例えば、サービス業や飲食業、小売業の場合は、100万RM以上の払込資本金がなければEmployment Passの取得が原則できないので注意が必要です。

5.取締役の決定

非公開会社であれば、取締役が最低1名で会社を設立できます。発起人(株主)と同一人物が取締役でも構いません。

取締役はマレーシア人である必要はなく、全員日本人でも構いませんが、最低1名の取締役はマレーシア居住であることが必要です。なお、18歳以上であれば取締役になれます。

旧会社法では2名の居住取締役が必要でしたが、改正により緩和され1名で足りることとなりました。これまで2名の居住取締役を確保することに苦労する日系企業が多くありましたが、改正により人材確保が容易になりました。
(ちなみに、法改正により公開会社や公開会社の子会社の役員の年齢上限70歳も撤廃されました。)

なお、公開会社は、新会社法においてもマレーシア居住の取締役が2名必要です。

【非公開会社とは】
非公開会社とは、株主が50名以下、株式が譲渡制限されている、株式や社債等を公募してはならないなどの要件を満たす会社です。社名の後ろに、Sdn.Bhd(Sendirian Berhad)と付きます。

6.定款、必要書類の作成

新会社法になり、定款を作成するか否かは、自由に選択することが出来るようになりました。

定款を作成しないことを選択した場合は、その会社や取締役、株主の権利義務については、新会社法の規定にの原則に従うこととなります。もし、新会社法の規定に従わないことが認められている部分について、自社の規定にて会社運営をしたい場合は、定款を作成し、定款にそれを記載します。

以上の通り、定款の作成をしないという選択もありますが、各省庁に事業ライセンスの申請が必要な場合等は、やはり定款を作成すべきと言えます。

旧会社法では、基本定款(Memorandum of Association)と付属定款(Articles of Association)という2種類の定款の保持が求められていましたが、新会社法では、「Constitution」という一つの定款に統一され、定款を作成しないことも選択可能になりました。

7.マレーシア会社登記所(CCM)に会社設立の申請

登記申請書(スーパー・フォームと呼ばれます。)に取締役による宣誓書等の添付書類をを添付し、オンラインでCCM(マレーシア会社登記所/Companies Commission of Malaysia
)に申請します。登記料は、1,000RMです。

払込資本金1リンギットで会社設立登記を行い、その後に資本金の増資を行うのが一般的です。

8.登記完了

CCMから設立登記完了の通知(Notice of Registration)を受領したら登記手続き完了です。

なお、会社設立後には、30日以内に会社秘書役を任命しなければならなりません。

Shintaro Akanauma

Shintaro Akanaumaアクティス株式会社 代表取締役

投稿者プロフィール

日本で経営コンサルティング会社を経営しており、中小企業のマレーシア進出支援にも力を入れています。
家族はマレーシア、クアラルンプール近郊に在住しており、私も毎月マレーシアと日本を行き来していますので、その中で得た生の情報をお届けいたします!

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