マレーシアで事業を展開する為の事業拠点形態の選択

マレーシアで事業を展開する為に置く事業拠点の形態には、現地に子会社などの法人を設立する以外にも方法があり、状況や事業方針によって選択肢があります。

代表的な方法としては、本格的に進出する前段階の情報収集のために駐在員事務所を置く方法、日本の法人の支店をマレーシアに置く方法、そして現地法人を設立する方法です。
その他、拠点を置かずにマレーシアの企業との提携という方法も事業展開の一つとして考えれらえますね。
ここでは、拠点を置く3つの方法と業務提携という方法について、概要をお伝えしたいと思います。

駐在員事務所・地域事務所の設置

外国企業は、マレーシア政府の許可を得て、駐在員事務所(Representative Office)又は地域事務所(Regional Office)を設置することができます。会社法に基づく登記は必要ありません。

ただし、マレーシアに駐在員事務所や地域事務所を設置する主な目的は、本格的に事業活動を行う前段階の情報収集のためのものですので、厳密にはマレーシア進出の方法というよりは、進出準備の方法と言えます。

多くの場合、マレーシアや周辺国(シンガポール、インドネシア、タイ、ベトナム等)の市場調査、現地でのネットワーク作り、法人設立準備などを主な目的として設立されます。

・駐在員事務所(Representative Office)
マレーシアにおいて情報を収集などをする目的で、政府から設置を許された外国企業の事務所(オフィス)。

・地域事務所(Regional Office)
東南アジアにおける、外国企業やその関連会社等のためのコーディネーションセンターとして活動する外国企業の事務所(オフィス)。

駐在員事務所・地域事務所が行える活動内容には制限があり、主に下記の活動が出来ます。

  • マレーシアや周辺国における投資や事業機会の情報収集、調査、分析
  • 原材料・部品調達に関する情報収集、調査、分析
  • 事業企画、製品開発、関係会社間のコーディネート、本社への報告
  • その他、直接的に商取引に結びつくような営業活動ではない活動

出来ない活動としては、下記のような活動になります。

  • 輸出入を含む商取引、その他商業活動はできません。
  • 外国企業の代理としてビジネス上の契約締結を行うことはできません。
  • 外国企業の子会社、関連会社、支店の経営に関与することはできません。

駐在員事務所・地域事務所を設立する際には、マレーシア投資開発庁(MIDA)に申請します。
書類の提出から認可取得までにかかる期間は約2カ月です。
認可期間は通常2年ですが、MIDAの承認があれば延長できる場合もあります。

設立の要件としては、上記の活動制限の他、下記のようなものがあります。

  • 駐在員の就労には、出入国管理局から正式な雇用パスを得なければならない。
  • 独立した事務所を構え、事務所設置後14日以内に、その住所をMIDAに通知する。
  • 「駐在員事務所」又は「地域事務所」であることを明示した看板を掲示する。
  • 毎年、MIDAに活動報告書を提出する。
  • 事務所として年間30万RM以上の費用支出と、それを証明する書類の提出。

なお、駐在員事務所の駐在員は、通常の個人所得税の対象となる一方、地域事務所の駐在員は、税制上優遇されており、マレーシア滞在日数分の課税対象所得についてのみ課税されます。

≪メリット≫

他の進出形態に比べると手続きが簡易であり、初期費用も少なくてすむ他、撤退することになった場合の手続きもシンプルです。

≪デメリット≫

あくまでも情報収集や製品開発などを目的とし、直接商取引、営業活動をすることができない。

日本企業(外国企業)の支店設置

外国企業の支店は、マレーシア会社法に基づいてマレーシア会社登記所(Companies Commission of Malaysia/以下、CCMと記載)に登記して設立することが出来ます。

登記にかかる期間は約1ヶ月で、登記費用は本社の資本金額に応じて最低5,000RM~最高70,000RMが掛かります。

支店設立をしてマレーシア進出することで、商取引や営業活動をすることが可能となりますが、「流通取引・サービスへの外国資本参入に関するガイドライン(MDTCCガイドライン)」では、卸・小売業・飲食業においては支店開設が認められておらず、現実的に日系企業の支店設立による事業展開を難しくおり、一般的な選択肢にはなっていません。

マレーシア政府や政府関係機関との合同プロジェクトを行う場合などに活用されるケースが多いようです。

なお、現地法人を設立する場合と異なり、資本金を投資する必要はなく、活動できる期間も無制限です。

現地法人と同じく会計監査、税務申告の義務があります。

現地法人の設立

マレーシア進出における最も一般的な方法は、現地法人の設立になります。マレーシア政府も現地法人での進出を基本的に奨励しています。

独資(全額出資)で設立する方法と現地企業との合弁による設立方法がありますが、マレーシアでは、IT企業、飲食業、製造業、コンサルティング業など多くの業種で、外国企業全額出資の会社による事業活動が認められています。

※マレーシア法人の設立に関する詳細はこちらのページをご覧ください。
>> マレーシア法人の設立手順~新法(The Companies Act 2016)対応~

また、アジア各国では、小売業や物流業に対する外資規制が厳しい傾向にありますが、マレーシアは、一定の条件付きで外資100%出資が認められています。

マレーシア会社法は、2016年に約50年ぶりに改正され、2017年1月に施行されました。
マレーシアの会社形態には、株式有限責任会社、保証有限責任会社、無限責任会社の3つがありますが、一般的には株式有限責任会社が選択されます。

株式有限責任会社は、公開会社(BHD.)と非公開会社(SDN. BHD.)に分けられ、、マレーシアに進出する日系企業の大半が非公開会社の利用になります。

設立手続きとしては、まずCCMに希望する会社名のネームサーチ(社名使用許可申請)を行い、許可が得られたらCCMに会社設立登記をオンラインで申請をします。

非公開会社は、最低1名の発起人と最低1名のマレーシア居住取締役がいれば設立が可能です。

社名は、すでに登記されている商号は使えず「Royal」、「King」、「Queen」、「Prince」、「Princess」、「Crown」、「Regent」、「Imperial」、など王族との関係を連想する言葉や「Federal」「State」「National」などの政府機関と間違えるような言葉は商号に使えません。

マレーシアの企業との提携

マレーシアに支店設置や現地法人の設立は行わず、マレーシアの企業と業務提携をして、自社の商品・サービスをマレーシアで販売するような形態でのマレーシア進出です。

今回紹介する4つの方法の中で最もライトな取り組みですが、業務提携先の都合が大きく影響するなど、自社の自由度は低いと言えます。

手続きとしては、日本での他社との業務提携の際と同じように、業務提携先の企業と業務提携契約を交わして行います。

Shintaro Akanauma

Shintaro Akanaumaアクティス株式会社 代表取締役

投稿者プロフィール

日本で経営コンサルティング会社を経営しており、中小企業のマレーシア進出支援にも力を入れています。
家族はマレーシア、クアラルンプール近郊に在住しており、私も毎月マレーシアと日本を行き来していますので、その中で得た生の情報をお届けいたします!

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